禅語を味わう

しょうじゅせんねんのみどり

松寿千年翠

松寿千年翠

黄檗宗第五十五代加藤慈光管長書

この語は松の木の緑色が千年の長い歳月を経ても風雪に耐えぬいて、少しもその色を変えないという意であり、祝語として床の間の掛軸にもよく使われる禅語です。
「松樹千年翠」と書くのが普通ですが、めでたい席の為にこのように「寿」のあて字をする時もあります。
古来より松はめでたい木とされてきました。
松竹梅を「歳寒の三友」と称したり、中国の古書『礼記』や司馬遷の『史記』などでは松を「千歳の松」として天地の長久なるにたとえています。
禅門においては松に仏を見て、その不断の説法を心で聞けと説きます。
雪圧せどもくだがた澗底かんていの松。』
どれほどの積雪があろうと押しつぶされることなく、雄々しく谷底にそびえる松は、大自然の中での「生」の有様を黙然として厳かに説いています。
松が風雪に耐え千歳の翠を保つが如く、私達もあふれる活力と正しい信念をもって人生を生きぬきたいものです。
とはいっても、松の緑は春には新しい芽をふき、古い葉は枯れ散っています。
つねに移り変わりながら、新旧を超えて千古変わらぬ生命が在ることを知らなければなりません。
まったく変わらないのならば造花といっしょです。
日々新たなものがあってこそ、常に変わらざる姿を保つことができます。
常に変化しながら、しかも変化しない。
動きながら、しかも動かない。
そこに不滅の生命を見ていくことが大切なのです。